土からはじまる、芋の表現

「畑仕事に奇跡は起きない」
飲む人の心に、どこか懐かしさや安らぎの余韻を残す。
白石さんは、そんな焼酎造りを目指しておられます。
芋は、農薬や除草剤を使わず、肥料も使わない。土の中の微生物や虫、動物たちを含め、いちき串木野という土地が持つ力を最大限に生かしながら、芋を育て、焼酎を造られています。
そうして生まれた芋焼酎は、どっしりとした力強い芋の香りを持ちながら、口当たりはまろやか。旨味とコクがじんわりと続く、たまらなくおいしい味わいです。
化成肥料を使えば、通常3トンほど収穫できる畑でも、農薬や除草剤を使わずに栽培すると、収穫量は1.3トンほど。半分以下になることもあります。
今回、白石さんとの会話の中で、特に印象に残ったのが、
「畑仕事に奇跡は起きない」
という言葉でした。
自然の摂理に逆らわず、日々、自然と対話するように畑と向き合い続けているからこそ、出てきた言葉なのだと思います。
収穫量が減り、手間も時間もかかる。
それでも白石さんが芋作りに力を注ぐのは、もちろん、おいしい芋焼酎を造るためです。
造り手には、それぞれの考え方や正義があります。
その中で白石さんは、芋焼酎の出来は、芋の栽培によってほとんど決まると考えておられます。
白石さんの夢は、
「飲み手が、土地の味で自分の焼酎を選ぶようになること」
例えば、
「今年は粘土質の畑の出来が良さそうだから、多めに買っておこう」
そんな会話が、飲み手の間で自然に交わされるようになることです。
そんな飲み手が少しずつ増えていくように、私たち酒販店も、造り手の背景や畑の違いを丁寧に伝えていきたい。
そう考え、今回、白石酒造さんが芋を育てる9か所すべての畑を見てまいりました。
畑の違いによって、焼酎の味わいは本当に変わるのか。
その答えを、ぜひ皆さまにも飲み比べながら感じていただきたいと思います。
一つだけお伝えすると、農薬や除草剤を使わずに育てた芋は、化成肥料を使って育てた芋に比べ、でんぷん量が少ない傾向があります。
でんぷんが少なければ、一般的には酒質のボディは軽くなりがちです。
しかし、白石さんの焼酎は、淡く繊細な味わいでありながら、決して味が抜けません。
静かでありながら奥行きがあり、飲み進めるほどに土地の個性がゆっくりと広がっていきます。
畑ごとに異なる土の個性と、その土地が育んだ芋焼酎の表情を、ぜひ感じるままにお楽しみくださいませ。

